「鼻」には、一人の内供が出て来る。わたしが思うのには、プライドが高く、意志が弱い人だ。自分の鼻を笑われるのを、何よりも嫌い、おそれていた。また、自分と同じ長い鼻を持った人を探していた。でも、わたしもそのことに関しては、内供の気持ちがよくわかる。例えば、みんなが一つのことをできるとき、自分だけがそのことをできないと、自分と同じできない人を探す。できない人が多いと、そのことができなくても、笑われたり、はじをかいたりしなくてすむと考えてしまうのだ。なにも、むりにできない人を探さなくても、そのことをできるようになればいいのに。内供の鼻にしても、長いことに自信を持っていればいいのに、鼻を気にしている。こんな所にも内供の意志の弱さが表れている。だから内供は、いつもみんなと一緒の短かい鼻になりたいと思っていたのだろう。
この話を読んでいて、わたしと内供はよく似ているという事に気づいた。内供の気持ちがよくわかると思ったのも、わたしと内供が似ているせいではないかと思う。わたしが、もし内供の立場だったら、内供と同じことを考えると思うからだ。もし内供が、鼻が長くなかったら、自分自身の弱さに気づかず過ごしただろう。
また、この内供は、芥川龍之助自身ではないかとも思う。芥川龍之介に前に何かあってそれを内供が鼻が長いという設定にして、その時思ったことをそのまま内供の思ったこととして書いているような気がする。だから、内供だけじゃなくて、わたしもこの作者も、プライドが高く、意志が弱いということになる。
だから、他人の目ばかり気にして、自分だけが笑われるのは、どうしても耐えられなかったのだろう。でも、鼻が短かくなったとき笑われた内供は、初めて自分には長い鼻がいいのだと気づく。他人にはないこせい的な鼻も、自分も、大切にしなければいけないと思うようになる。
この本を読むまで、わたしは、大きな心を持ちたいと思いながらも、小さいことばかりぐずぐず言っていたような気がする。
前にも、何度か自分が嫌になったことがあった。でも、この話を読んで、もっと自分の個性を、自分自身を大切にしたいと思うようになった。それには、まず自分でも好きになれるほど、すばらしい人間にならなければいけない。この話を読んで、わたしは、勇気づけられ、少し成長したような気がする。
自分をみとめ、人もみとめられるすばらしい人間になれるように努力していこうと思う。