2019/08/26

『セロひきのゴーシュ』(宮沢賢治)を読んで【小学生用】

 いい音楽とは、演奏する人と聴く人の両方が作りだすものではないのでしょうか。なぜなら、この話のように、下手下手と言われていたゴーシュが、毎晩のようにおしかけてくる動物たちに閉口しながらも、セロをひいてやるうちに、自分が、自分のセロが必要とされていてることが分かって"自信"がついたため、演奏会ですばらしい音楽を作りだすことができたと思うからです。
 最初の晩、ねこがやってきて、「トロイメライ」をひいてくれとたのまれたゴーシュは腹を立てて「インドの虎狩り」をひきまくります。曲に熱中してしまうのです。次の晩は、かっこうです。この時は、かっこうの音程にあわせてドレミファという音楽の基礎を反省することになります。三日目は、たぬきの子に「おくれる。」といわれてリズムの大切さに気づきます。そして最後の晩、ゴーシュのセロが多くの病気の動物たちを助けていたことを知り、自分の音楽に対して自信がもてたんだと思います。
 演奏会で、ゴーシュはアンコールで一人でセロをひきます。この時、ゴーシュは、みんながどう思うかなんて考えずに、やけくそになって「インドの虎狩り」をひきました。あのねこが来た時と同じです。このゴーシュの姿を読んでいて、曲の中で曲の世界に入りこみ、曲のためにひく。そんな音楽がすばらしい感動する本当の意味の音楽だと私はわかりました。最初のゴーシュは、自信がなく、下手くそといわれていたから、こんな音楽は作り出せなかったんだと思いました。
 自信がつくと人間は他人にもやさしくなれるのでしょうか。最後には、窓から飛び出そうとしてけがをしたかっこうに、「ごめんよ」とあやまるのです。
 私は、この話の主人公は、ゴーシュと動物たちだと思います。ふつうに読めばゴーシュだけでしょう。確かにセロをひくのはゴーシュです。けれども、ゴーシュの自信を引き出し、「インドの虎狩り」を熱中して、曲に入りこんでひかせたのは動物たちです。だから、主人公は、ゴーシュと動物たちだと思います。
 それにもう一人、私の中に主人公がいます。それは、この話を読んだ私自身です。私もやっぱり友だちや先生にいろんな場で自信をつけてもらって成長して来たんだと思えるからです。私は気が強く、男子でもむかっていくように思われていますが、本当は気が弱いのです。代表で何かをすると必ずきん張します。でも、みんなの目があり、言葉があるから、強い自分を引き出せるのです。ゴーシュとは、全然ちがう自信のつき方だけど、やっぱり私とゴーシュは似ています。だから、私は、ゴーシュに自分を重ねて読んでいたんだと思います。そして、この話と出会ったことも、私自身が主人公に思えるもう一つの理由です。

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