2019/08/26

『星の王子さま』(サン=テグジュペリ)を読んで【中学生用】

 星の王子さまへ。
 星の王子さま、あなたは、大人みたいなすごいことを言ったかと思えば、子供みたいに泣いたり、ちょっと不思議なんですね。でもそんなに自分の「喜怒哀楽」を素直に表現できるところは、とてもうらやましいです。賢いことを、と言っても王子さまのいうことはきっといつも正しくて、あたり前のことなんだけれど、そんなことをすらすらと少しも恥ずかしがらずに言えるのは、やっぱり一つのものを大事に思っている王子さまだからだと思います。
 私があなたに出会ったのは、英語の教科書の「The Little Prince」という所を習った時でした。心をうたれる場面がたくさんあって、そのたびにいろいろ私なりに考えました。特に、キツネさんと王子さまが出会った所が考えさせられました。その場面で私も王子さまも、一匹のキツネさんに教えられたと思います。それは、「自分の目から見て、ある人、ある物は、ほかの十万もの人や物と同じなんだ。だから、お互いがいなくなっても別にいいんだ。それは、ある人や物から見た自分にも同じことなんだ。だけど、自分が、ある人や物を飼いならすと、もうお互いに離れちゃいられなくなるよ。自分にとって、この世でたった一人の人、一つの物になるし、ある人や物にとって、自分はかけがえのないものになるんだ…。」 という所です「飼いならす」とは「仲よくなる」という意味だそうです。その人や物と仲よくなったら、当然相手のことも考えて行動しないといけないし、一緒にいるんだったら、相手の時間を預かってるっていう責任もあると思います。だからこのキツネさんの言うことは、その通りだなと思いました。そして、そのかけがえのない人や物が、友達や家族だったりした時、相手を大事にすることが、大切だと思いました。これから先、大人になって、一番大事な人ができた時、いつまでもその人を大事にできるように、このキツネさんの話を忘れないでいようと思いました。
 キツネさんは、「大事な人同士の間でもきまりがある」ということも教えてくれました。たぶん、時間を守ることや歩調を合わせて歩くことだと思います。約束をするから、その日が他の日より待ちどおしかったり、楽しみだったりするんじゃないのかな。とにかく、相手の気持ちを考えることが、一番大切なことだと思いました。そのためにも、「きまり」は必要なんだとわかりました。
 キツネさんだけではありません。王子さま、あなたから教わったこともたくさんあります。それは、「一本のバラの花を愛すること」です。一本のバラの花を愛して、そしてきっと、そのバラの花からも愛されているから、王子さまは私から見て、すごくすてきな人なのでしょう。 私には、一本だけではたりないくらいの大事なバラの花がたくさんいます。でも、その多くのバラの花がなくても一本のバラの花だけあれば、幸せだということがわかってきました。王子さまがたくさん咲いているバラより一本のバラの花を大事にしたように、私も私の一本のバラの花(今は秘密ですが。) を大事にしたいと思います。元気のない時には、気にかけたり、励ましたりしたいと思います。きっと、私にしかわからない、一本のバラの花のよさがあるのだから。いろんな人が持っている一本のバラの花は、数万本のバラの花にだって優るし、数万本のバラの花の中にいても、見つけることができるのでしょうね。私だったら、その一本のバラの花がいてくれれば、今より何倍も優しくなれるし、何十倍もがんばれると思います。
「美しいところは、目に見えないのさ。」と、王子さまが言ったように、私にも目に見えない美しさがあることを願います。そして、その美しさに誰かが気づいてくれますように。すべての人が、いつでも愛する人の美しさを信じられますように。
 作者があなたを愛したように、私もあなたを愛する読者の一人です。夜になると、あなたのいる広い空を見上げます。王子さまの笑い声が聞こえてくることを願いながら。
 星の王子さま、あなたに出会ってから、以前より空を見るのが好きになりました。「大人はだれもはじめは子供だった。しかしそのことを忘れずにいる大人は、いくらもいない。」という作者の言葉があるけれど、私は夢を描きながら、空を見上げることが好きな子供のままでいるかぎり、星の王子さまのことは忘れません。そして私は、ずっと好きなものを好きと言ったり、きれいなものをきれいと素直に言える純粋な子供のままでいたいと思います。いつかあなたに出会える日を心まちにしながら。
 いつも私に希望をくれる王子さまへ。