2019/08/26

『アンネの日記』(アンネ・フランク)を読んで【中学生用】

 小学生の頃、初めてこの本を読んだ時は、彼女に対する同情や人々を苦しめた戦争への怒りのほうが強かった。改めてこの本を読もうと決めた時、まず最初に「アンネのアルバム」という本を私は開いた。彼女の写真や周囲の人々や建物などを知ることで、より深く彼女を感じることができるのではと思ったからだ。そして、今、アンネに近い年齢になり、この「アンネの日記」を読みながら、自分自身と彼女を比べたり、彼女の思いを知ろうとしている自分がいた。なぜだろう。アンネの一つ一つの言葉や思いが、すっと心に入ってくるのは……。
 「アンネの日記」は、わずか十五年しか生きられなかった一少女のあまりにも有名な日記である。ナチスのユダヤ人迫害からのがれるために始めた隠れ家生活は、今のわたし達にはとても想像もできぬ厳しいものだった。そんな中で、彼女は十三歳から日記を付け始めたのだ。最初の頃の内容は、普通の女の子らしいユーモアのある文章だが、緊迫した隠れ家生活が、彼女の鋭い人間観察力や文章力を高めることになるとは、なんて皮肉なことだろうか。本当に、これが十四・五歳の少女が書いたものなのか疑いたくなるような、深く、鋭い、繊細な文章は、今のわたし達のように恵まれた環境の中にある者では書くことができないと思う。
 アンネは、隠れ家という小さな空間の中、書くことで自分自身を見つめ、また、喜びを見つけていった。今の私と、彼女の共通点をあげるとすれば、まず第一にこの点であると思う。私も書くことは大好きだ。その時々に思ったことや考えたことを思うがままに書いてみる。喜び、悩み、不安など、自分の心の中を表現することは、とても簡単なことではないけれど、書くことによって、なぜか心がいやされていくのを感じる時がある。アンネも、もしかして同じだったのではないだろうか。文章の言葉の中に新しい自分を発見し、気持ちをぶつけていく。書くことはアンネにとって心の動揺や不安を押さえるために必要なことだったのではないだろうか。思春期にいた彼女にとって、この日記は望む通り、大きな心の支えとなり、なぐさめになったことは、唯一よかったと思えることだ。
 もう一つの共通点は何かというと、「平凡な女になりたくない」という考え方の部分だと思う。アンネは、「何か心を打ち込んでする仕事を持ちたい」と言っている。私もまったく同じ考えだ。現在の日本は、昔より男女平等になったといわれているが、果たして本当にそうだろうか。女性の社会進出が叫ばれ、とりまく環境は整いつつある。しかし、家事、育児の問題、賃金格差など、まだまだ封建的な考え方が一部に残ってはいないだろうか。アンネの夢はジャーナリストになることで、そのために、自分の作品を批評し、多くの本を読み、勉学を続けていた。ああいう環境の中でだ。私もやはり、「家庭の仕事を
するだけで忘れられてしまうような生活はしたくない」と思っている。今は、とてもアンネのように決められないけれど、心から好きで続けられる仕事を、いつか持ちたいと思っている。彼女のような、はっきりとした希望は、私に夢を与えてくれる。
 第三の共通点は、歴史好きということだろう。系図調べが好きな彼女は、本やパンフレットのメモを取り、ときには歴史の一節をそのまま筆記もしている。いくら好きでも、私などは、読むだけに終わっているような気がする。彼女の深い考察は、こういう性格やものの見方からきているのかもしれない。
 読んでいると、性格が私と違うなと思うところも発見できた。アンネは自分を強い性格の、勇気がある女だと言っている。実際に、あのナチスの収容所でも、泣き言ひとつもらさなかったという。彼女は、いつも乏しい食物を母親や姉に分けてやり、お腹のすいている人には、とっておきのパン切れを惜しみなくやっていた。なんという勇気と精神力だろう。もし、自分が同じ立場にたったら、そういう態度がとれるだろうか。彼女のような強い勇気は、平和な日本にいる今の私には無理かもしれないが、私にはないものとして、少しでも近づけることはできると思う。
 今も戦争は、世界のどこかで続いている。深い悲しみや、無残な傷跡を残すことを知っていながら…。アンネの時代の戦争にも、日本が少なからず、かかわっていたことを思うと、私は本当に悲しく思う。今の自分にできることは何だろう。これからの自分にできることは何だろう。原爆が投下された日本にいるわたし達は、何をするべきか、よく考えてみる必要があると思う。アンネの夢を、そして、まだまだいたであろう、この時代の多くのアンネ達のためにも、私は、力いっぱい生きなければならないと思った。

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